“気軽に絵を描く”その行為を楽しんでほしい

本命を超えて入選した『ネコの絵描きさん』

わけん氏
「実は今回2つの作品をエントリーしていて、もう1つの作品のほうを「よし、(入賞を)狙ってやろう!」と思っていたんです(笑)」

そう明かしたのは、元任天堂の社員で構成されたデベロッパー、Nukenin のプログラマーを務めるわけん氏。わけん氏は『ネコの絵描きさん』のほかに、もう1つのタイトルでエントリーしていたが、審査を通過したのは前者だった。「こっち(『ネコの絵描きさん』)のほうがトップ 20 に選ばれて驚きましたね」と、率直な感想を述べた彼だが、高評価につながった本作はどのようにして生まれたのだろうか。

ふだん、わけん氏は京都にあるゲームクリエイターが集まるシェアハウスでゲーム開発をしているという。基本は 1 人で制作を進め、絵や楽曲を外に依頼する形を取っており、『ネコの絵描きさん』ではイラストをイラストレーターのことり氏、サウンドを作曲家の椎葉大翼氏にお願いして生まれたと教えてくれた。そして、作品を作るきっかけになったのは、ある2つの作品だった。

アナログで絵を描く面白さをデジタルで表現

わけん氏
「『お絵かきしりとり』や『テレストレーション』って、絵が下手でも面白いんですよ。そういうものを、デジタルデバイスを使って遊べないかなと考えたんです」

絵本の『お絵かきしりとり』とボードゲームの『テレストレーション』、2 つに共通しているのは“絵を描き、それが何かを当てるゲーム”というもの。『ネコの絵描きさん』も、自身が描いた絵を人に見てもらって何を描いたか当ててもらったり、逆に人が描いた絵が何かを当てるという遊びを楽しむゲーム。わけん氏は見事に、デジタルデバイスでこの 2 作品のような遊びを作り出したと言える。

わけん氏
「それと、ネットワークを使った、人間の緩やかなつながりにも興味があり、そういうものを作りたいという想いがあったのもきっかけですね。絵が苦手な人は絵を描くことが嫌になりがちですが、下手な方でも楽しんでもらえるようなものを作りたくて。 1 番気を遣ったのは、描くことと見てもらうことのサイクルをどうしようかという部分ですが、今回は放置ゲームにすることでそのサイクルを実現しました」

意図的に制限を設けることで絵を描く敷居を低くした

本作は SNS のような密なコミュニケーションが取れる機能がないため、好きなときに絵を描くことに没頭できる。放置ゲームにしたことで、例えば昼休みや夜の寝る前の時間に遊び、描いた絵の評価は翌日に見るなど、のんびりと楽しめる。こうした気軽さは、忙しい現代人にとってちょっとした癒しにもなるだろう。さらに、本作のこだわった点について、わけん氏は次のように語った。

わけん氏
「絵が苦手な人でも楽しんでもらいたかったので、ペンの種類や色は増やさず、細かい作業があえてできないようにしています。凝った絵を描くというよりは、気軽に描いてほしかったので。それでも凝った絵を描いて下さる方もいらっしゃいますが(笑)」

これからの『ネコの絵描きさん』のビジョン

あくまで気軽に遊んでほしいという姿勢のわけん氏だが、「このゲームは、どれくらいの収益になるかまったく見えなかったので、1 番コンパクトで面白い要素を味わえるように制作したんです。最近ちょっと売上が上がってきたので、これくらい売上が上がるのなら、もう少しコストをかけて、もっといいものを作りたいなと思い始めたところです」と、ビジネスという観点でも、しっかり今後を見据えていることを明かした。そのうえで、近々でやりたい展開もあるという。

わけん氏
「もう少しボリューム感を出していきたいと思っています。現在、ゲーム内のコインやダイヤを使える要素が少ないのですが、そこの用途を増やしていきたいですね。例えば、アトリエ部分を拡張して華やかにできるとか。またローカライズがちょっと難しいなと思っていたため、日本語に特化していて英語版をまだ作っていないんです。ですが、まずは英語版を作りたいですね」

今回のイベントでトップ 3 入り&特別賞を受賞という、大きな成果を成し遂げたわけん氏と『ネコの絵描きさん』。誰もが気軽に遊べる作品を生み出し、ますますの発展を目指す Nukenin の、これからのさらなる躍進に期待したい。

ネコの絵描きさん
お題に沿って描いた絵を人に見せて評価してもらったり、他人の描いた絵が何かを当てるお絵かきゲーム。あえてペンの種類や色数を増やさないことで、凝った大作絵というよりは、落書きを楽しむかのような気軽に遊べるゲームデザインが特徴。