『ねぇAI、本当の事がしりたい』は夫婦が辿りいた愛の

実際の経験をもとにゲームを開発

基善氏と佐綾氏の、椎根夫妻によるゲーム開発チーム・コトリヤマ。温かみのあるイラストが特徴的なクイズゲーム『ねぇAI、本当の事がしりたい』の開発のきっかけは、なんと過去の挫折だった。

佐綾氏
「以前、AIとチェスで対戦する本格的なゲームを約1年半開発していたのですが、時期が悪く、それ以上開発を続けても意味がない状況に追い込まれてしまったんです」

その失敗が影響で、基善氏はひどく落ち込んでしまい、ゲーム開発からも退きそうになるほど暗い日々が続いたそうだ。そんな夫の姿を見るに見かねた佐綾氏は、「笑ってほしいと思って、“じりひん”や“しくじり”など、“しり”が付くダジャレをイラストといっしょに見せたんです。そしたら、すごく笑ってくれて(笑)」と、本作を開発することになった経緯を教えてくれた。

実際に制作された『ねぇAI、本当の事がしりたい』で使われているダジャレは、ほとんどがこのときに考えられたもの。一見シュールなゲーム性とは裏腹に、ゲームの根本には夫婦の愛情に満ちた実体験が根付いている。

誰でも遊べるようなゲームデザイン

多くの人にプレイしてほしいという願いから、プレイヤー層のターゲットは、ふだんはあまりゲームに触れない人に設定したという。

佐綾氏
「私は昔からゲームが得意ではないので、友だちといっしょにゲームで遊べないのがコンプレックスでした。だから、『ねぇAI、本当の事がしりたい』は、あまりゲームを遊ばないような人でも楽しめる作品に仕上げたいと思いました」

Indie Game ということもあり、ふだんは友人や家族など、ごく少数の人にしかテストプレイをしてもらえず、一般プレイヤーの反応を目にする機会は滅多にない。そのため、Google Play Indie Games Festival 2018 の開催には感謝しながらも、「誰でも楽しめるものに仕上がっているか心配だった」という佐綾氏。しかし、当日のプレイヤーの好意的な反応に「楽しんでプレイしてくれてよかった」と、胸をなでおろしていた。

ゲーム性の部分では、よりよくするための意見交換が夫婦のあいだで頻繁に行われたそうだ。デザイン、シナリオ、ゲームシステムの観点からは佐綾氏が、プログラムの観点からは基善氏が問題点を見直すことでブラッシュアップを重ね、2 人が共有していた理想像に近づけていった。「『ねぇAI、本当の事がしりたい』がゲームの入り口を広げるような存在になればいいなと思います」と、佐綾氏は語る。

“やさしさ”とともに開発を続けていく

また、制作時には “やさしいゲーム” という標語を掲げていた。この標語内の “やさしい” にはゲームの難易度の易しさ、そして温かみのある優しさという、2 つの意味が込められている。『ねぇAI、本当の事がしりたい』は、まさにプレイヤーに優しく寄り添うようなゲームと言える。

佐綾氏
「チェスのソフトで失敗したときの私たちのように苦しんでいる人にも、ぜひプレイしてもらって『ばかばかしいな』と笑って、少しでも元気になってほしいんです」

そうした熱意は、物語にも込められている。『ねぇAI、本当の事がしりたい』では、ほんわかとしたイラストの雰囲気からは想像もつかないような、シリアスな展開の物語が描かれる。佐綾氏によると、これは「悲しいことが経験を持っている人にも感情移入してもらうため」の手法。ゲームのシステム自体は、言葉を入れ換えてダジャレを作るという至ってシンプルなもので、子どもでも楽しめるのだが、そうしたシナリオで、大人も作品の世界に引き込むというわけだ。

一時期はゲーム開発をやめる選択肢も考えたほど思い悩んだ2人だが、『ねぇAI、本当の事がしりたい』が高く評価されたこともあり、現在では今後もゲームを作り続けていく決心が付いたという。「プレイヤーが感じている痛みも和らげられるくらいの力を持ったゲームを作りたいです」と、微笑みながら話す佐綾氏の表情には、たくさんの優しさが感じられた。

ねぇAI、本当の事がしりたい
スマートフォンに搭載された“ものしりAI”となって、イラストに応じた“しり”の付く言葉を入力しながら、物語を体験していく一風変わったクイズゲーム。解いたクイズの答えは、イラストともに辞典から確認することもできる。